PROLOGUE
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序章

「やめる」前に、読んでください
― 妊娠・授乳婦と薬の、たった3つの基本 ―

この章でわかること

  • ベースラインリスク(もともとあるリスク)って何?
  • 添付文書の「禁忌」って、本当に絶対ダメ?
  • 薬を自己判断でやめるのは、なぜ危ない?
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序章|はじめに
prologue / 01
OPENING 著者より

ABOUT THIS BOOK「飲んで大丈夫?」より
「やめて大丈夫?」を問いたい

はじめまして、産科薬剤師のりーこです。7年間、総合病院の産婦人科病棟で、のべ何千人ものママたちの服薬相談にのってきました。

そこでいちばん多かった相談は「この薬、飲んでも大丈夫ですか?」。次に多かったのが「怖いから、薬はぜんぶやめました」。実は、後者のほうが危ないことがあるんです。

🌷 この本のスタンス

  • お医者さんも薬剤師さんも、忙しい外来の3分ではここまで話せない
  • だからInstagramで、連載で、この本で書き続けています
  • 主人公は妊娠6ヶ月のマミさん。一緒に不安を解きほぐしましょう
002
序章 — はじめに
💬
プロローグの対話
マミさん、相談室に来る
SCENE はじめましての会話
マミ
りーこ先生こんにちは。妊娠6ヶ月なんですけど…ネットで調べれば調べるほど不安で眠れなくて…
りーこ
うんうん、ようこそ。まず深呼吸しよっか。吸って、吐いて。何を調べて不安になったの?
マミ
花粉症の薬を1週間やめたら夜眠れなくて…風邪で熱が出てロキソニンも飲んじゃって、「絶対ダメ」って書いてあって…泣いちゃって
りーこ
結論から言うね。"やめてしまったこと" のほうが、まず心配。ロキソニンは週数によるから後で一緒に見よう。その前に3つだけ頭に入れてほしいことがあるの。
マミ
3つ、ですか?
りーこ
そう、たった3つ。これを知ってるだけで、ネットの怖い記事に振り回されなくなる。
🔑
ネットに振り回されない、たった3つの基本 次のページから順に解きほぐしていきます
003
序章 — プロローグの対話
序章|基本①
ベースラインリスクという考え方
BASIC 01 リスクはゼロにはできない

BASELINE RISK赤ちゃんに「もともとあるリスク」
を知っていますか?

りーこ
薬とは関係なく、健康な人が妊娠しても 100人中3〜5人には何らかの先天異常 が見つかるの。これをベースラインリスクと呼ぶよ。
マミ
え、そんなに!? 知りませんでした…
りーこ
日本だけじゃなく世界中で3〜5%。遺伝・偶然・環境…色々な理由で起きるの。
りーこ
たとえば「先天異常リスクが1.2倍」という研究があったとする。怖いよね。でも冷静に計算すると…

📊 ざっくり計算してみる

  • ベースライン3% × 1.2倍 = 3.6%
  • 絶対数でいうと 0.6%の上乗せ
  • 一方、薬をやめて喘息発作 → 酸素不足 → 赤ちゃんも酸素不足
  • → どっちのリスクが大きい?を比べるのが大事
004
序章 — 基本①
⚖️
比べるリスク
ゼロリスクは存在しない

大原則:小さいリスクはどっち?

考え方イメージ
❌ ゼロリスク思考「薬は怖い=ぜんぶやめる」
→ やめたことで起きる不調を見落としがち
◎ 比較リスク思考「飲むリスク vs. やめるリスク」を比べる
小さいほうを選ぶのが大原則
マミ
…そうやって考えるんですね。ゼロにはできないんだ…
りーこ
できないの。お薬をぜんぶやめても3〜5%は残る。"もともとあるリスク" を出発点に、上乗せを冷静に見る。これが1つめ。

🌸 基本①のまとめ

1赤ちゃんには3〜5%の自然発生リスクがもとから存在する
2薬のリスクは"上乗せ何%?"で見る
3飲むリスク vs やめるリスク、小さいほうを選ぶ
005
序章 — 基本①
序章|基本②
「禁忌」と書いてあっても、使える薬がある
BASIC 02 添付文書のウラ側

PACKAGE INSERT「禁忌」は、
製薬会社の"自衛"でもある

マミ
でも先生、添付文書に「禁忌」って書いてあったら絶対ダメなんじゃ…?
りーこ
ここめちゃくちゃ大事な話。添付文書って、誰が作ってるか知ってる?
マミ
…厚労省?
りーこ
製薬会社が作って国が承認するの。訴えられたくないから、ちょっとでもリスクがあれば"禁忌"と書きがち。妊婦で大規模試験ができないのもあって、データが少ないと安全側に振れるのね。

💡 ネット記事の震源地

  • 「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい」
  • → これが"妊娠中は禁忌"記事の出所
  • 実臨床では使用実績が山ほど積み重なっている薬が多い
006
序章 — 基本②
実臨床の第一選択
添付文書と現場のギャップ

添付文書は「慎重」、実際は第一選択の薬

薬剤添付文書実臨床
アセトアミノフェン(カロナール)慎重解熱鎮痛の第一選択
第二世代抗ヒスタミン
(アレグラ・アレロック等)
慎重花粉症に安全に使える
吸入ステロイド(パルミコート等)慎重喘息はむしろ止めちゃダメ
レボチロキシン(チラーヂン)慎重妊娠したら20〜30%増量が世界標準
マミ
えっ、増量!? やめるんじゃなくて?
りーこ
赤ちゃんの甲状腺は12週まで自分で作れないの。ママのホルモン不足=赤ちゃんの脳の発達に直結。だから増量が必要。
りーこ
添付文書だけ読んでたら「やめなきゃ」になるよね。添付文書と実臨床の"通訳"をするのが薬剤師の仕事

🌸 基本②のまとめ

1添付文書の「禁忌」は製薬会社の自衛が混ざる
2データが少ない薬ほど"安全側"に振れる
3実臨床には使用実績のある薬が山ほどある
007
序章 — 基本②
序章|基本③
「自己中断」こそ最大のリスク
BASIC 03 今日いちばん覚えて帰って

SELF-STOP IS DANGEROUS「自分で、やめないで」

りーこ
ママが眠れない・ごはん食べられない・ストレスでボロボロ――これ全部胎児にマイナス。薬を飲まないことで赤ちゃんを守ってるつもりが、実は守れてないことがあるの。
りーこ
マミさん、花粉症の薬を1週間やめたよね。それで夜眠れてない…?
マミ
はい…毎晩、鼻水とくしゃみで。旦那にも「大丈夫?」って心配されて…
りーこ
自己中断が危ないのは花粉症の薬だけじゃない。この本で出てくる全部の薬にあてはまるの。
008
序章 — 基本③
🚫
自己中断NGリスト
やめる前に必ず相談

絶対に自己中断してほしくない薬(一例)

やめるとどうなる?
喘息の吸入ステロイド発作で酸欠 → 赤ちゃんも酸欠
抗うつ薬(SSRI)産後うつの再発リスクが跳ね上がる
甲状腺の薬赤ちゃんの脳の発達に影響
バイアスピリン妊娠高血圧・不育症の予防が崩れる
降圧剤(薬剤の選び直しは必要)脳出血・子癇のリスク
📣
やめたくなったら、やめる前に相談してね 「継続していいか相談する」が正解。「自分でやめてから報告する」は間違いのもと
マミ
わかりました…あの先生、涙出てきました。
りーこ
うん、それだけ一人で抱えてたんだよね。大丈夫、ここから一緒に整理しよう。
009
序章 — 基本③
📝
序章|まとめ
りーこ先生の3行メモ
SUMMARY 覚えて帰ってほしい3つ

3 LINES TO REMEMBERたった3行、これだけ覚えて

🌸 序章の核心

1薬を飲まなくても、赤ちゃんには 3〜5%のベースラインリスクがある。薬を怖がるより、上乗せ何%かを見る。
2添付文書の「禁忌」は製薬会社の自衛であることが多い。実臨床で使える薬は山ほどある。
3自己中断は妊婦さん最大のリスク。やめる前に、必ず薬剤師か医師に一言。
📊上乗せ何%?
📖禁忌≠絶対ダメ
📣やめる前に相談
010
序章 — まとめ
📚
この本の使い方
お守りがわりに

全部読まなくていい

🌷 使い方ガイド

  • 目次を見て、気になる症状・薬の章だけ開いてOK
  • 各章の最後に「りーこ先生のまとめ3行」「薬剤早見カード」あり
  • 時間がないときはそこだけでも十分役立ちます
  • 巻末の「薬剤別早見表」お守りがわり
  • 読んでも不安が消えないときはオンライン相談もあります(巻末QR)

次の章から

第1章は、マミさんもやらかしてしまった「ロキソニン」の話。そして風邪・インフル・解熱剤・市販薬の正しい選び方をまとめて見ていきます。

👉
では、第1章へ 風邪・熱・インフル・頭痛――いちばん相談が多いテーマから
※本書の内容は医学的一般情報です。個別の治療は主治医・かかりつけ薬剤師にご相談ください。
011
序章 — この本の使い方