CHAPTER 8
🧠

双極性障害・てんかん

いちばん"共同意思決定"が必要な領域

この章で答えること

  • リーマス(リチウム)、妊娠で飲み続けていい?
  • デパケン(バルプロ酸)は絶対禁忌?
  • てんかんの薬、どれに替える?
  • 抗精神病薬・ADHD薬は?
⚖️
第8章|8-1
リチウム(リーマス)
STEP 01 "絶対禁忌"ではなく"要注意"

LITHIUM10年前の常識は
もう更新されている

マミ
学生時代の親友が双極性障害でリーマスを10年。妊娠したいけど、ネットで"心奇形"って出てきて、妊活できずにいるんです。
りーこ
リチウムとエブスタイン奇形のリスクは昔言われてた。でも2010年代の大規模研究で"リスクはあるけど、以前言われてたほど高くない"ってわかってきたの。
マミ
"絶対ダメ"じゃないんですか?
りーこ
双極性障害は自己中断すると再発率が一気に跳ね上がる病気。妊娠中の再発は、ママも赤ちゃんも守れない。

リチウムの妊娠中リスク

📊 数字で見るリスク

  • エブスタイン奇形:自然発生は1万人に1人 → リチウム服用中で10〜20人(絶対リスク0.1〜0.2%)
  • NEJM 2017大規模研究:用量依存性あり、600mg/日以下なら増加は有意でない
  • 妊娠中期以降:甲状腺機能低下・腎機能・尿崩症のリスク
  • 授乳中:乳児の血中濃度が上がるので医師管理下で
066
第8章 — リチウム
📅
リチウム継続のルール
妊活前〜授乳期の計画

リチウム 5つの基本ルール

📋 ルール

  • 妊活前に主治医と相談:継続・切り替え・減量を検討
  • 16〜20週に胎児心エコー:エブスタイン奇形のチェック
  • 妊娠中は血中濃度をこまめに測定(循環血液量増加で濃度が下がりやすい)
  • ④ 分娩前後はリスク再評価(産褥期に毒性が出やすい)
  • ⑤ 授乳中は医師監督下で(乳児の甲状腺・腎機能モニタリング)
りーこ
リチウムは"絶対禁忌"ではなく"要注意"。ちゃんと計画すれば、多くの人が無事に出産・育児できるの。自分でやめないのが鉄則。
💡
再発リスクと天秤にかける "続ける・やめる"の二択ではなく、主治医と一緒に"どう続けるか"を決める

🌸 8-1のまとめ

1リチウムは絶対禁忌ではない
216〜20週に胎児心エコー
3自己中断が最も危険
067
第8章 — 継続ルール
🚫
第8章|8-2
バルプロ酸(デパケン)
STEP 02 妊活前の切替が基本

VALPROATE妊娠希望なら
まず避けたい薬の筆頭

マミ
双極性・てんかんで、デパケンとかバルプロ酸って名前がよく出てきますよね。
りーこ
これは妊娠を希望するすべての女性で、できるだけ避けたい薬の筆頭。理由は3つ――

⚠️ バルプロ酸で避けたい理由

  • 神経管閉鎖障害(二分脊椎)のリスク約10倍
  • 先天異常全般のリスク約2〜3倍
  • 子どもの認知発達への影響(IQ平均7〜10点低下)
マミ
じゃあ、絶対ダメなんですね……
りーこ
"代替薬で同じ効果が得られるなら、必ず切り替える"が基本。ただし、バルプロでしか安定しない難治例は主治医・薬剤師・産婦人科医の3者で徹底的に話し合う=共同意思決定(SDM)で決めるの。
068
第8章 — デパケン
🔄
バルプロ酸の代替薬
双極性障害の場合

双極性障害 妊娠中の選択肢

妊娠中評価
ラモトリギン(ラミクタール)◎ 第一選択の代替、用量調整必要
リチウム○ リスクと利益を天秤に
オランザピン/クエチアピン○ 使用可
バルプロ酸× 原則避ける
カルバマゼピン× 神経管閉鎖障害リスク
りーこ
妊活前に"ラモトリギンへ切り替え"は定番。ラミクタールは妊娠中でも使いやすいけど、妊娠中は血中濃度が下がるから増量が必要なケースが多いの。
🔬
妊娠週数に合わせてこまめに血中濃度測定 ラミクタールは妊娠中の薬物動態変化が大きい。月1の測定が目安

🌸 8-2のまとめ

1バルプロ酸はNTD・IQ低下で避けたい
2第一代替はラモトリギン
3切替は必ず妊活前
069
第8章 — 代替薬
第8章|8-3
てんかんの薬
STEP 03 発作を起こさせないこと最優先

EPILEPSY"発作を起こさない"
が最優先

ユキ
ユキ:高校の同級生が、子どもの頃からてんかんでイーケプラを飲んでるんだけど。
りーこ
てんかんは"発作を起こさせないこと"が最優先。発作中の転倒や無酸素状態は、赤ちゃんに重大な影響が出るから。

てんかん薬 妊娠中ランキング

商品名一般名評価コメント
イーケプラレベチラセタム◎ 第一選択催奇形性低い
ラミクタールラモトリギン◎ 第一選択データ豊富、用量注意
ビムパットラコサミドデータ蓄積中
デパケンバルプロ酸× 避けるNTD・IQ
テグレトールカルバマゼピンNTD・顔面奇形
フェニトインフェニトインヒダントイン症候群
トピナトピラマート×口唇口蓋裂・低出生体重
070
第8章 — てんかん薬
てんかん妊娠管理
5つのチェックポイント

チェックリスト

📋 てんかん妊娠中マネジメント

  • 葉酸 4〜5mg/日(通常の10倍量、神経管閉鎖障害予防)
  • 単剤治療を目指す(複数併用は催奇形性リスク増)
  • 血中濃度を月1で測定(ラモトリギンは特に)
  • ④ 発作記録をつける
  • ⑤ 分娩時の対応を産科と共有
りーこ
"妊活開始=イーケプラ or ラミクタールへの切り替え検討"。単剤で発作コントロールできるのが理想。できるだけシンプルに。
🌱
葉酸は"普通の妊活用量"ではなく"10倍量" てんかん薬服用中は 4〜5mg/日 が目安(通常は 400μg/日)

🌸 8-3のまとめ

1イーケプラ or ラミクタールの単剤
2葉酸 4〜5mg/日
3発作ゼロが最優先
071
第8章 — 管理
💊
第8章|8-4
抗精神病薬
STEP 04 非定型は妊娠中も使える

ANTIPSYCHOTICS自己中断が
いちばん危ない

マミ
統合失調症の方は、妊娠したらどうするんでしょう?
りーこ
非定型抗精神病薬(オランザピン・クエチアピン・リスペリドン・アリピプラゾール等)は、妊娠中も使えるの。自己中断が再燃を招くのは他の精神疾患と同じ。

抗精神病薬 妊娠中評価

妊娠中
ジプレキサ/オランザピン○ データ豊富
セロクエル/クエチアピン○ 使用可
リスパダール/リスペリドン○ 使用可
エビリファイ/アリピプラゾール○ 使用可
レキサルティ△ データ蓄積中
ハロペリドール○ 古典、使用可
クロザピン(クロザリル)△ 特殊
👶
新生児適応症候群は多くが数日で改善 筋緊張・振戦・哺乳不良。自己中断の再燃リスクのほうがずっと大きい
072
第8章 — 抗精神病
🎯
第8章|8-5
ADHD薬
STEP 05 妊活前に中止が基本

ADHD妊活前中止+
非薬物療法にシフト

マミ
若い子でADHDでコンサータを飲んでる方、増えてますよね。
りーこ
ADHD薬は、妊娠希望があるなら基本的に妊活前に中止。データが少なくて安全性がはっきりしないの。
妊娠中
コンサータ/メチルフェニデート× 原則中止
ストラテラ/アトモキセチン△ データ少、原則中止
ビバンセ/リスデキサンフェタミン× 中止
インチュニブ/グアンファシン△ データ蓄積中
りーこ
ADHDの症状管理は、薬物療法 → 認知行動療法・環境調整へシフトしていくのが現実的。"妊娠中は薬なし、産後授乳終了後に再開"がよくあるパターン。

🌸 8-4/8-5のまとめ

1非定型抗精神病薬は使用可
2ADHD薬は妊活前に中止
3非薬物療法へシフト
073
第8章 — ADHD
📝
第8章|まとめ
りーこ先生の3行メモ
SUMMARY 覚えて帰ってほしい3つ

3 LINES TO REMEMBER"共同意思決定"で
道を決める

🌸 第8章の核心

1リチウムは絶対禁忌ではない。計画的に続ければ妊娠・出産可能。自己中断は双極性再発で命にかかわる。
2バルプロ酸は妊活前の切り替えが基本。神経管閉鎖障害+IQ低下。ラモトリギンへ移行が主流。
3てんかんはイーケプラ or ラミクタール単剤 + 葉酸 4〜5mg/日が王道。発作ゼロを最優先に。
⚖️リチウムOK
🚫バルプロ×
葉酸10倍
074
第8章 — まとめ
🗂️
第8章 薬剤早見カード
お守りに

双極・てんかん・精神 総まとめ

商品名一般名妊娠中授乳中ひとこと
リーマス炭酸リチウム△ 計画的に△ 医師監督下エブスタイン1万人10人
デパケンバルプロ酸× 原則避けるNTD・IQ
ラミクタールラモトリギン用量増必要
イーケプラレベチラセタム第一選択
テグレトールカルバマゼピン避けたい
トピナトピラマート×口唇口蓋裂
ジプレキサオランザピンデータ豊富
エビリファイアリピプラゾール使用可
コンサータメチルフェニデート× 中止×妊活前
ストラテラアトモキセチン△ 中止データ少
075
第8章 — 早見カード