CHAPTER 6
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甲状腺

妊娠したら"増量"が必要な、特殊な薬

この章で答えること

  • チラーヂンを飲んでます。妊娠したら量どうする?
  • バセドウ病の薬、妊娠中は替えるって本当?
  • 橋本病で妊活中。何を準備する?
  • 甲状腺の薬、授乳中は?
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第6章|6-1
チラーヂンは「増量」が必要
STEP 01 真逆の誤解に注意

LEVOTHYROXINE妊娠したら
"減らす"じゃなくて"増やす"

マミ
同期が橋本病でチラーヂン飲んでて、「妊娠したら飲んじゃダメなのかな」って不安がってます。
りーこ
それね、真逆の誤解。チラーヂンSは妊娠したら逆に"増量"が必要な特殊な薬なの。
マミ
増量!? 減らすんじゃなくて?
りーこ
赤ちゃんの甲状腺は12週まで自分で作れないから、それまでママの甲状腺ホルモン100%でまかなう必要があるの。足りないと赤ちゃんの脳の発達に関わる。
りーこ
だから妊娠判明したらすぐ、チラーヂン20〜30%増量が世界標準。自己判断で増量しないで、内分泌科に連絡して処方を変えてもらおう。
🧠
TSH 2.5 mIU/L以下を目標に 赤ちゃんのIQ・神経発達を守るための"増量"
050
第6章 — チラーヂン
📅
チラーヂン 妊娠中の調整スケジュール
時期別の対応

レボチロキシン 妊娠中の扱い

タイミング対応
妊活前TSH 2.5 mIU/L 以下を目標
妊娠判明後すぐ20〜30%増量(例:100μg → 125μg)
初期〜中期4〜6週ごとにTSH測定
後期必要に応じ微調整
分娩後妊娠前の量に戻す

💡 飲み方のポイント

  • 朝、空腹時に内服(食後だと吸収低下)
  • 服用後30〜60分は食事・他の薬を避ける
  • 鉄剤・カルシウム剤・胃薬(PPI)とは4時間以上あける
  • 授乳中は問題なく継続可(母乳への移行は微量)

🌸 6-1のまとめ

1妊娠判明後すぐ20〜30%増量
2内分泌科に連絡して処方変更
3朝空腹時・他剤と時間をずらす
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第6章 — 調整
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第6章|6-2
バセドウ病はPTUに切替
STEP 02 妊娠初期の臨界期

GRAVES' DISEASEメルカゾール → PTU
の切り替えルール

マミ
別の友達がバセドウ病でメルカゾール飲んでて、「妊娠したら薬替えろ」って言われたって。
りーこ
バセドウ病は"妊娠初期だけ"プロパジール(PTU)に切り替えるのがルール。これ結構大事。

バセドウ病 妊娠中マネジメント

時期推奨薬理由
妊活前〜判明前メルカゾール(MMI)通常の第一選択
妊娠初期(〜13週)プロパジール(PTU)へ切替MMIは頭皮欠損・食道閉鎖の報告
中期〜後期MMIに戻す or PTU継続PTUは肝障害リスク
授乳中MMI・PTUどちらも可母乳移行少ない

⚠️ MMIの催奇形性とは

  • 妊娠5〜10週の臨界期で使うと、頭皮欠損・食道閉鎖・後鼻孔閉鎖の報告
  • 確率は低い(1〜4%程度)
  • でもあらかじめ回避できるなら回避という考え方
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第6章 — バセドウ
🗺️
バセドウ "妊活プラン"
4つのステップ

バセドウ病 妊活前の準備

📋 4ステップチェックリスト

  • 甲状腺機能を安定(FT3・FT4正常、TSHはやや低めでOK)
  • ② 必要ならPTUへ切り替え
  • TRAb測定:強陽性だと赤ちゃんにも影響
  • ④ 妊娠判明後すぐ内分泌科に連絡
マミ
妊活前からPTUに変えておくと安心ってことですね。
りーこ
その通り。妊娠に気づくのが遅れても安心。ただしPTUは肝障害リスクがあるから、中期以降はMMIに戻す人も多いよ。
🗓️
時期によって薬を"切替える"という発想 バセドウ病は妊娠中のマネジメントが分岐点
053
第6章 — 妊活プラン
🌧️
第6章|6-3
産後甲状腺機能異常に注意
STEP 03 産後うつと誤診されやすい

POSTPARTUM THYROID「産後うつ」と
間違えやすい落とし穴

ユキ
ユキ:妹が治療中で「産後うつっぽくなって薬飲み忘れてた」って言ってました。
りーこ
産後に"産後甲状腺機能異常症"が起きる人が1割くらいいるの。産後6〜12週くらいに一時的に機能が乱れることがあって、産後うつと誤診されやすいから要注意。
ユキ
産後うつと区別がつかないんですか?
りーこ
症状が似てるの。だから産後に気分の落ち込み・倦怠感が続いたら、甲状腺機能(TSH・FT4)を測るのがセオリー。甲状腺のせいなら、薬で一気に楽になるよ。
🩺
産後の不調、甲状腺も忘れずに "産後うつ"と決めつけず、血液検査で鑑別
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第6章 — 産後
📝
第6章|まとめ
りーこ先生の3行メモ
SUMMARY 覚えて帰ってほしい3つ

3 LINES TO REMEMBER甲状腺の薬は"分岐点"

🌸 第6章の核心

1チラーヂンは妊娠したら"増量"。赤ちゃんの脳発達のためTSH 2.5以下。
2バセドウ病のメルカゾールは妊娠初期(〜13週)だけPTUに切替。できれば妊活前から。
3産後甲状腺機能異常は"産後うつ"と間違えやすい。気分不調が続いたら甲状腺機能測定を。
⬆️チラーヂン増量
🔄MMI→PTU
🩺産後も測定
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第6章 — まとめ
🗂️
第6章 薬剤早見カード
お守りに

甲状腺の薬 総まとめ

商品名一般名妊娠中授乳中ひとこと
チラーヂンSレボチロキシン◎ 増量必要甲状腺機能低下 第一選択
メルカゾールチアマゾール(MMI)△ 初期は避ける初期はPTUへ
プロパジールプロピルチオウラシル(PTU)○ 初期に使う肝障害注意
ヨウ化カリウム丸KI医師判断で術前など
I-131(放射性ヨード)ヨウ化ナトリウム× 絶対禁忌×授乳中もNG
※甲状腺疾患は内分泌科・産科の連携で管理します。自己判断で量を変えないでください。
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第6章 — 早見カード
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りーこ先生からのコラム
甲状腺と妊娠
COLUMN 見逃されやすい疾患

A NOTE FROM RIEKO妊活中の血液検査に
TSHを加えて

甲状腺機能異常は不育症・流産・早産・妊娠高血圧のリスクを上げます。妊活を考え始めたら、ぜひTSH・FT4の採血を受けてみてください。

自覚症状がほぼないのが甲状腺疾患の怖いところ。疲れやすい/冷える/体重増加――「そんなもん」で片づけずに、一度調べる価値があります。

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次章は「自己免疫・バイオ製剤」 リウマチ・潰瘍性大腸炎…続けていい薬の判断を掘り下げます
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第6章 — コラム