CHAPTER 4
🌙

心と眠り

「自分でやめる」は絶対にしないで

この章で答えること

  • 抗うつ薬を飲んでました。妊娠したらやめるべき?
  • 産後うつ・マタニティブルーが心配。予防できる?
  • 睡眠薬が手放せません。赤ちゃんに影響ある?
  • 抗不安薬(デパス・ソラナックス)は?
💭
第4章|4-1
SSRIを5年飲んでます。やめるべき?
STEP 01 いちばんやっちゃいけない自己中断

SSRIやめる勇気より、
続ける覚悟を

マミ
大学生の頃からうつ病でジェイゾロフトを5年飲んでたんです。妊娠がわかって、半月前に自己判断でやめて…最近気分が落ち込んで涙が止まらなくて。
りーこ
マミさん、それ、いちばんやっちゃいけないパターン。落ち着いて聞いてね。
りーこ
SSRIを妊娠を理由に急にやめると、かなりの高確率で再発する。産後うつ・希死念慮のリスクもぐっと上がるの。
りーこ
そして"ママのうつ"は赤ちゃんの愛着形成・発達にも影響する。だから薬のリスクより再発のほうがずっと怖いの。
マミ
でも、ネットで「SSRIは心臓奇形のリスク」って…
りーこ
それね。20年前の一部の研究がきっかけでパキシル(パロキセチン)だけ心臓奇形との弱い関連が指摘された。でもセルトラリン等ほかのSSRIは先天異常リスク上昇の明確な報告なし
032
第4章 — SSRI
📊
抗うつ薬ランキング
新規開始ならセルトラリン

妊娠中の抗うつ薬 評価

商品名一般名評価コメント
ジェイゾロフトセルトラリン◎ 第一選択世界で最もデータ多い
レクサプロエスシタロプラム新しめだが使用可
ルボックス/デプロメールフルボキサミン古典的SSRI
プロザックフルオキセチン海外で実績(日本未承認)
パキシルパロキセチン新規開始は避ける
トリンテリックスボルチオキセチン△ データ少新薬、様子見
サインバルタデュロキセチン(SNRI)継続中ならOK
イフェクサーベンラファキシン(SNRI)継続可

💡 パキシル服用中の人は?

  • すでに安定している人は急に切り替えない
  • 主治医と一緒にジェイゾロフト等への計画的な移行
  • 自己判断の中断が一番危険
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第4章 — 抗うつ薬早見
⚖️
第4章|リスク比較
やめるリスク vs 続けるリスク
COMPARE どちらが大きいか

RISK COMPARISONやめるほうが、
ずっと怖い

薬を続けるリスク

💊 継続の影響

  • 新生児適応症候群(NAS):出生直後の一時的な啼泣・筋緊張低下。ほとんどが数日で自然軽快
  • 持続性肺高血圧症:ごくまれ(0.3%未満)

薬をやめるリスク

項目数値・影響
産後うつ再発率40〜60%(継続すれば10〜20%)
希死念慮・自殺リスク上昇
育児困難愛着形成への影響
赤ちゃんへの関わり低下
⚖️
比べると、やめるリスクが圧倒的 「やめる」ではなく「続ける」「上手に使う」が正解
034
第4章 — リスク比較
🌷
第4章|4-2
産後うつは予防できる
STEP 02 10人に1〜2人が経験

POSTPARTUM DEPRESSION「赤ちゃん可愛いはずなのに、
涙が出ます」

ユキ(後輩)
ユキ(マミの後輩・生後4ヶ月):最近、夜眠れなくて。赤ちゃんが可愛いはずなのに、なんだか涙が出て…
りーこ
それ、産後うつの始まりかもしれない。決して"母親失格"じゃない、10人に1〜2人が経験するの。

リスク因子と予防策

⚠️ リスク因子

  • 妊娠前からのうつ・不安障害の既往
  • 妊娠中からの抗うつ薬中断
  • 睡眠不足(新生児期)/サポート不足/経済的不安

🌸 予防策

  • 既往があるなら妊娠中から抗うつ薬を継続
  • 産後2〜6週に助産師訪問(EPDSスクリーニング)
  • 睡眠を優先:夜の授乳を分担/日中も昼寝
  • "完璧なママ"を目指さない:家事は手抜きでOK
  • 症状が2週間以上続いたら精神科受診
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第4章 — 産後うつ
🌙
第4章|4-3
睡眠薬が手放せません
STEP 03 連用から頓用へ

SLEEPING PILLS「やめるべき?」より
「頓用に切り替えられる?」

マミ
妊娠前からマイスリーを毎晩飲んでます。やめたほうがいいですか?
りーこ
睡眠薬は"やめるべきか、続けるべきか"より、"必要なときだけ使う"に切り替えられるかが鍵だよ。

睡眠薬 妊娠中ランキング

種類評価
メラトニン受容体作動薬ロゼレム○ 比較的安全
オレキシン受容体拮抗薬デエビゴ/ベルソムラ△ データ蓄積中
非ベンゾ系マイスリー/アモバン/ルネスタ△ 短期・頓用なら可
ベンゾジアゼピン系ハルシオン/レンドルミン/デパス△ 長期は避ける
抗ヒスタミン系ドリエル/レスタミン○ 市販、単回OK
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第4章 — 睡眠薬
🛏️
薬を使う前にできること
非薬物的アプローチ

眠りを整える7つのステップ

🌙 非薬物的アプローチ

  • ① カフェイン断ち(14時以降)
  • ② 夕食は就寝3時間前まで
  • ③ 寝る前のスマホを減らす(ブルーライト)
  • ④ 寝室の温度・湿度を整える
  • ⑤ マグネシウム(酸化Mgは眠りにも少し効く)
  • ⑥ 認知行動療法(オンラインプログラムあり)
  • ⑦ それでもダメならロゼレム → 頓用の非ベンゾ
りーこ
妊娠中の不眠はホルモン変動・夜間頻尿・胎動・不安…色々な原因。薬だけでなんとかしようとしないのがポイント。
マミ
ぜんぶやめるんじゃなくて、頓用に切り替える…現実的ですね。

🌸 4-3のまとめ

1睡眠薬は"連用から頓用へ"移行
2妊娠中はロゼレムが比較的安全
3まず非薬物的アプローチから
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第4章 — 眠りを整える
💠
第4章|4-4
抗不安薬(デパス・ソラナックス)
STEP 04 ベンゾジアゼピン系

ANXIOLYTICS「頓用で月数回」
なら心配しすぎない

マミ
パニック障害でソラナックスを頓用で持ってます。発作のときだけ飲んでます。
りーこ
ベンゾジアゼピン系ね。妊娠初期の連用は口唇口蓋裂との関連がわずかに指摘されてる。でも"頓用で月数回"ならそこまで心配しなくていい
マミ
完全にやめるべきですか?
りーこ
急な完全中断はしない。頓用頻度を減らす+SSRIや認知行動療法で発作を抑える方向にシフトしていくのが長期的にはベスト。

📌 ベンゾジアゼピン系を使うときの原則

  • 頓用のみ、長期連用しない
  • ② 分娩直前の高用量は新生児の呼吸抑制リスク(分娩前1週間は減量)
  • ③ 授乳中はロラゼパム(ワイパックス)が比較的安全
  • ④ 妊娠中の新規開始は原則避ける(SSRIを優先)
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第4章 — 抗不安薬
📝
第4章|まとめ
りーこ先生の3行メモ
SUMMARY 覚えて帰ってほしい3つ

3 LINES TO REMEMBER心の薬と上手に付き合う

🌸 第4章の核心

1抗うつ薬(SSRI)の自己中断は再発リスクを跳ね上げる。ジェイゾロフト(セルトラリン)は妊娠・授乳第一選択。
2産後うつは10〜20%が経験。妊娠中から継続+産後の早期介入が予防の鍵。
3睡眠薬・抗不安薬は"長期連用から頓用へ"移行が現実解。ベンゾは分娩直前の高用量注意。
💊SSRI継続
🤱産後ケア
🌙睡眠薬は頓用
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第4章 — まとめ
🗂️
第4章 薬剤早見カード
お守りに

心と眠り 総まとめ

商品名一般名妊娠中授乳中ひとこと
ジェイゾロフトセルトラリン◎ 第一選択世界で最も実績
レクサプロエスシタロプラム使用可
パキシルパロキセチン△ 新規避ける継続ならOK
サインバルタデュロキセチンSNRI
ロゼレムラメルテオンメラトニン型
デエビゴレンボレキサントオレキシン型
マイスリーゾルピデム△ 頓用△ 短期非ベンゾ
ハルシオントリアゾラム分娩前注意
ソラナックスアルプラゾラム△ 頓用連用避ける
ワイパックスロラゼパム△ 頓用授乳で選ばれる
※精神科の薬は自己判断で調整せず、必ず主治医と相談の上で継続・調整してください。
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第4章 — 早見カード
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りーこ先生からママへ
コラム
COLUMN 一人で抱え込まないで

A LETTER FROM RIEKO「お薬を続ける」は
愛情の形でもあります

心の薬を続けることに、罪悪感を持つママは本当に多いです。「薬に頼ってる自分は母親失格じゃないか」と泣いて相談にくる方もいます。

でも、違います。「ママが元気でいること」ほど、赤ちゃんにとって大きなプレゼントはありません。お薬は、その大事なママを守るツール。罪悪感ではなく、「今日もお薬を飲んで、ちゃんとママでいる」という誇りを持ってほしい。

もし周りに「妊娠中に薬なんて」と言う人がいたら、この本のページを見せてください。正しい情報は、きっとあなたの味方になります。

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次の章は「血圧」「甲状腺」「自己免疫」 続けていいの? が大きな分岐点になるテーマが続きます
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第4章 — コラム