CHAPTER 10
🍼

授乳中の薬

"母乳に出るから全部ダメ"は、まったくの誤解

この章で答えること

  • 授乳中、どの薬が赤ちゃんに影響する?
  • M/P比・RIDって何?
  • 風邪・頭痛・花粉症・抗生剤……授乳中OKの薬は?
  • 搾って捨てる"ポンピング"って必要?
💭
第10章|10-1
授乳中の薬、本当にダメ?
STEP 01 使える薬は想像の100倍

MISUNDERSTANDING"授乳中ダメ"は
大きな誤解

ユキ
ユキ:生後4ヶ月で母乳育児なんですが、風邪薬も頭痛薬も薬局で"授乳中はやめてください"って。そんなに薬は出るんでしょうか?
りーこ
結論から言うと、授乳中に使える薬は想像の100倍くらいあるの。"母乳に出るから全部ダメ"は日本で特にありがちな誤解
ユキ
えっ、100倍?
りーこ
世界の母乳指導のバイブル"Medications and Mothers' Milk"には、9割以上の薬が"授乳継続で問題なし"に分類されてるの。

❓ なぜ"ダメ"と言われがちか

  • ① 添付文書に"授乳中の使用を避ける"が書かれがち(製薬会社の自衛)
  • ② 薬剤師・医師が添付文書通りに対応してしまう
  • M/P比RIDという指標を使わない
086
第10章 — 誤解
📐
第10章|10-2
M/P比・RIDという物差し

授乳中の薬を評価する世界共通の指標

📊 M/P比(Milk / Plasma ratio)

  • 母乳中の薬物濃度 ÷ 母体血漿中の薬物濃度
  • 1未満:母乳への移行が少ない(ほとんどの薬)
  • 1以上:母乳のほうが濃度高い(要注意)

📊 RID(Relative Infant Dose)

  • 乳児が母乳から摂取する薬物量 ÷ 母体投与量 × 100%
  • 10%未満:安全(ほとんどの薬)
  • 10%以上:慎重 / 25%以上:授乳中止検討
りーこ
RIDが10%未満なら、乳児への影響はごく小さい。ほとんどの薬はここに収まるの。薬剤師に聞くときに"RIDは?"と聞けると話が早いよ。

🌸 10-1/10-2のまとめ

19割以上は授乳継続OK
2RID 10%未満が目安
3添付文書と実臨床は別
087
第10章 — 指標
🤧
第10章|10-3
授乳中の風邪薬
STEP 02 単剤を選ぶ

COLDロキソニンは
授乳中OK

ユキ
ユキ:実は昨日から風邪気味で。熱はないけど、咳と鼻水と頭痛がひどくて。

授乳中OKな風邪の薬

症状OKな薬RID(%)
発熱・頭痛アセトアミノフェン8〜24
発熱・頭痛ロキソニン/イブプロフェン0.6
デキストロメトルファン0.1未満
鼻水アレグラ・クラリチン0.4〜2
カルボシステイン安全
のどの痛みアズレンうがい薬局所
インフルタミフル0.5
りーこ
ロキソニンは授乳中OK! 妊娠20週以降はNGだけど、授乳中は移行がごく少ないから問題ないの。
ユキ
妊娠中禁忌って刷り込まれてたから、授乳中もダメかと。
りーこ
妊娠と授乳は別物。妊娠は"胎盤+週数"、授乳は"母乳移行+乳児代謝"の問題で、評価軸が違うの。
088
第10章 — 風邪薬
⚠️
第10章|10-4
授乳中NGな薬

"避けたい・中止検討"の薬

理由
放射性ヨウド(I-131)× 蓄積、長期中止
抗がん剤× 骨髄抑制
アミオダロン× 乳児甲状腺
ブロモクリプチン等× 母乳分泌抑制
エストロゲン含有ピル× 母乳量低下
リチウム△ 医師監督下
コデイン△ 乳児呼吸抑制事例
オキシコドン/トラマドール△ コデイン同様
高用量アスピリン△ ライ症候群
ベンゾ連用△ 乳児の眠気
🚨
コデインには特に注意 CYP2D6超高速代謝者で致死事例あり。市販総合感冒薬にも含有。授乳中は単剤選択を

🌸 10-3/10-4のまとめ

1ロキソニン・タミフルOK
2コデイン含有市販薬に注意
3放射性ヨウド・抗がん剤は×
089
第10章 — NG薬
💊
第10章|10-5
授乳中の抗生剤
STEP 03 ほとんどOK

ANTIBIOTICSほとんどの抗生剤は
授乳中OK

ユキ
ユキ:膀胱炎とかになったら困るなって。抗生剤はOKなんですか?
りーこ
ほとんどの抗生剤は授乳中OK。ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系、全部使えるよ。

抗生剤 授乳中評価

授乳中
サワシリン/ケフラール等◎ ペニシリン・セフェム
ジスロマック/クラリス○ マクロライド
クラビット/シプロキサン○ キノロン(古い情報は更新)
バクタ/バクトラミン△ 新生児期は避ける、3ヶ月以降OK
テトラサイクリン△ 長期は歯の着色
フラジール(メトロニダゾール)○ 短期OK
りーこ
昔は"クラビットは授乳中NG"って言われてたけど、これも古い情報。現在は短期なら問題なしに更新されてるの。
090
第10章 — 抗生剤
🥛
第10章|10-6
搾って捨てる?
STEP 04 多くの場合不要

PUMP & DUMP"念のため搾って捨てる"は
オーバー対応

ユキ
"授乳を1回抜いて、搾乳して捨てて"って指示されたことがあって、面倒で……
りーこ
ポンピング・アンド・ダンプって呼ばれる対応、多くの場合必要ないの。搾って捨てると母乳量が減ってしまう悪影響のほうが大きいことも。

✅ 必要なケース

  • 多量飲酒後(ビール大瓶2〜3本以上):血中から抜けるまで
  • 一部の抗がん剤・放射性物質
  • 造影剤:慣習的に言われるが現代は不要説も強い

❌ 不要なケース

  • 普通の抗生剤・解熱鎮痛剤・抗ヒスタミン薬
  • ワクチン接種・歯科麻酔・全身麻酔後

🌸 10-5/10-6のまとめ

1抗生剤はほぼOK
2搾って捨ては基本不要
3例外は造影剤・抗がん剤
091
第10章 — ポンピング
👋
第10章|10-7
断乳・卒乳の薬
STEP 05 自然卒乳が基本

WEANING薬で止めるか、
自然に減らすか

ユキ
もう少ししたら卒乳したいんですが、薬で母乳を止められるって聞いて。
りーこ
カバサール(カベルゴリン)で母乳分泌は止められる。でも自然卒乳のほうが体にやさしいから、急ぎの事情がなければそっちを勧めるよ。
使い方
カバサール1mg×1回で分泌停止(産後・死産時)
パーロデル(ブロモクリプチン)古典的、最近使われない

🌸 自然卒乳のコツ

  • 授乳回数を徐々に減らす
  • 張ったら冷やす/痛ければ圧迫
  • 押さない、引っ張らない
092
第10章 — 断乳
📝
第10章|まとめ
りーこ先生の3行メモ
SUMMARY 覚えて帰ってほしい3つ

3 LINES TO REMEMBER授乳中でも
使える薬はたくさん

🌸 第10章の核心

1"授乳中だから全部ダメ"は大きな誤解RID 10%未満ならほぼ安全。9割以上の薬は継続OK。
2ロキソニン・タミフル・アレグラ・ほとんどの抗生剤が授乳中OK。コデイン・リチウム・放射性ヨウドは要注意。
3"搾って捨てる"は多くの場合不要。例外は造影剤・一部の抗がん剤・多量アルコール。
📐RID10%未満
💊ロキソニンOK
🥛搾り捨て不要
093
第10章 — まとめ
🗂️
第10章 薬剤早見カード
お守りに

授乳中の薬 総まとめ

商品名一般名授乳中RID(%)ひとこと
カロナールアセトアミノフェン8〜24第一選択
ロキソニンロキソプロフェン0.6授乳中OK!
タミフルオセルタミビル0.5インフル時
アレグラフェキソフェナジン0.4眠気少
クラリチンロラタジン1.2眠気少
メジコンデキストロメトルファン0.1咳止め
サワシリンアモキシシリン1ペニシリン
ケフラールセファクロル0.1セフェム
クラビットレボフロキサシン○短期10〜15現在はOK
カバサールカベルゴリン×断乳用
コデイン含有単剤避ける
リチウム炭酸リチウム△ 医師監督12〜30乳児甲状腺
094
第10章 — 早見カード
💡
コラム
授乳中の薬・迷ったら

迷ったときの判断フロー

🔍 薬剤師に聞くときのコツ

  • "添付文書ではなくRIDで教えてください"と伝える
  • LactMed・Hale本を参照してくれる薬剤師を選ぶ
  • "産科・小児科に強い薬局"を覚えておく
🌸
授乳継続 > 薬を怖がって断乳 母乳育児のメリットは大きい。自己判断での断乳の前に、信頼できる薬剤師に相談を
りーこ
"薬を飲むために授乳をやめる"って選択、本当にもったいない。ほとんどの場合、授乳を続けながら薬を使えるの。
095
第10章 — コラム