CHAPTER 1
🤒

風邪・インフル・発熱

― いちばん相談が多い、〝急にくる症状〟 のQ&A ―

この章で答えること

  • 熱が出た。ロキソニン飲んでもいい?
  • じゃあ何だったら飲んでいいの?
  • インフルエンザにかかった。タミフルは飲んでいい?
  • 予防接種は受けていいの?
  • 咳・鼻水・のどの薬は何を選ぶ?
  • 家族がインフル!うつらないためには?
🤒第1章 風邪・インフル・発熱― 急にくる症状のQ&A ―
第1章第2章第3章
リスク ①妊娠中、飲んじゃった…を整理しよう

1-1ロキソニン、飲んじゃいました……

りーこ
先に結論:ロキソニン(NSAIDs)には 「20週の壁」がある。〜19週までの1〜2回ならまず大丈夫。20週以降は原則NG。まず落ち着いて、週数を確認しよう。
マミ(24週)
先生、妊娠初期に熱が出て、常備してたロキソニン飲んじゃったんです。絶対ダメって書いてあって、もう1週間泣き続けてて……
りーこ
マミさん、今、妊娠何週目?飲んだのは何週のとき?
マミ
今は24週、飲んだのは8週くらい。心拍確認できたばっかりの時期です……
りーこ
よし、落ち着いて聞いてね。初期(〜19週)のロキソニン1〜2回で赤ちゃんに影響が出た報告は今のところないの。本当にまずいのは 20週以降。これだけ覚えて帰ろう。
💡
覚えるのは「20週の壁〜19週は要注意だが致命的ではない/20週以降は原則禁忌
第1章 風邪・インフル・発熱
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💊1-1 ロキソニンと「20週の壁」ママのためのお薬相談室

ロキソニン(NSAIDs)の〝週数スイッチ〟

週数評価理由
〜19週避けたいが、1〜2回の内服で先天異常の報告はなし代わりの薬があるので、なるべく避ける
20週〜原則禁忌 ⚠️胎児の動脈管が収縮/腎機能低下→羊水が減る
出産後授乳中はほぼ問題なし母乳移行は少ない
※2024年10月、ロキソプロフェン・イブプロフェン・ジクロフェナックなどNSAIDs全般の添付文書が改訂。20週以降の注意がさらに厳しくなりました。

代わりに何を飲めばいい?

🏷 アセトアミノフェン(カロナール/タイレノールA)が第一選択

  • 1回量:500mg(市販なら300mg×2錠)
  • 1日総量:体重60kgなら最大4,000mgまで/ただし必要なときだけ
  • 間隔:4〜6時間/3日以上続けば受診
  • 市販の〝総合感冒薬〟は成分ごちゃ混ぜなので避ける。単剤を選ぼう

📝 りーこ先生の3行メモ

1熱・頭痛は アセトアミノフェン が第一選択。20週以降のロキソニンはNG
2総合感冒薬より 単剤 を。迷ったら薬剤師に「妊娠◯週です」と一言。
3高熱の放置はハイリスク。必要なときに・最小量・最短期間 が合言葉。
第1章 風邪・インフル・発熱
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🌡第1章 風邪・インフル・発熱1-2 熱には〝アセトアミノフェン〟
第1章第2章第3章
リスク ②熱が出たら我慢しない。放置のほうがこわい

1-2じゃあ、熱が出たら何を飲めばいい?

りーこ
答えはアセトアミノフェン(市販:タイレノールA/処方:カロナール)。妊娠全期間を通して、解熱鎮痛の第一選択。世界中のガイドラインで一致しています。
マミ
全期間!? 20週以降もいいんですか?
りーこ
うん、必要なとき・最小有効量・最短期間 なら、妊娠週数に関係なく使える。赤ちゃん用の解熱剤でも定番だから安心して。
マミ
でも先生、〝アセトアミノフェンがADHDリスクを上げる〟ってニュース見ました……
りーこ
それね。観察研究で何度か話題になったけど、因果関係は証明されてないの。詳しくは右ページで。
💡
覚えるのは「必要・最小・最短妊婦さんに第一選択のアセトアミノフェンも、使いすぎは避ける
第1章 風邪・インフル・発熱
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🧠1-2 アセトアミノフェンとADHD問題ママのためのお薬相談室

「ADHDリスク上昇」は本当?

2021年以降、アセトアミノフェンとADHDを関連づける観察研究が何度か話題になりました。ただ「薬を飲む妊婦さん」は、そもそも発熱・感染・炎症を抱えています。つまり病気のほうが影響している可能性が高い――これを交絡(こうらく)と呼びます。

2024年の兄弟姉妹比較研究(同じ母親から生まれた子を比べる手法)では関連は消えたと報告。米欧の主要学会も「妊婦の解熱鎮痛はアセトアミノフェン第一選択」の推奨を変えていません。

むしろ怖いのは〝高熱の放置〟

⚠️ 38.5℃以上の発熱が長引くと…

  • 流産・早産のリスクが上がる
  • 先天異常のリスク上昇の報告あり
  • 脱水・体力消耗で悪循環に
→ 熱が出たら 我慢しない。アセトアミノフェンで体を休めるのが正解。

正しい使い方

項目目安
1回量500mg(市販なら300mg×2錠、処方薬なら500mg×1錠)
1日総量体重60kgなら最大4,000mgまで/ただし 必要なときだけ
間隔4〜6時間あける
注意3日以上続くなら受診/お酒・肝臓の病気ある方は事前相談

📝 3行メモ

1アセトアミノフェンは全期間OK。赤ちゃん用にも使う安全成分。
2ADHDニュースは因果関係未証明。学会推奨は変わっていない。
3高熱の放置のほうがハイリスク。単剤のタイレノールAを選ぼう。
第1章 風邪・インフル・発熱
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🦠第1章 風邪・インフル・発熱1-3 インフルとタミフル
第1章第2章第3章
リスク ③インフルは〝薬を使ったほうがいい〟

1-3インフルエンザにかかりました!

りーこ
深呼吸。結論から:タミフル(オセルタミビル)を飲んでください。「飲んでいい」じゃなくて「飲んだほうがいい」。妊婦さんは重症化しやすいので、48時間以内の開始が勝負です。
マミ
先生、大変です。会社でインフルが流行って、私もかかっちゃいました……
りーこ
タミフル、妊娠中は第一選択。妊婦さんは 普通の成人の5倍以上の入院率 なの。
マミ
5倍!?
りーこ
妊婦さんは免疫が少し落ちてるし、肺も赤ちゃんで圧迫されてる。だから 薬を飲まずに乗り切るはダメ。早く飲んで重症化を防ぐが正解。
🤰妊婦は
重症化しやすい
🌡母体の高熱は
胎児に悪影響
💊タミフルは
実績豊富
48時間以内
の内服が勝負
💡
熱が出た→すぐ受診→タミフル」をセットで覚える妊娠中のインフルは〝我慢〟より〝早期内服〟
第1章 風邪・インフル・発熱
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💊1-3 抗ウイルス薬の優先順位ママのためのお薬相談室

妊婦向けの優先順位

薬剤妊婦での評価使いやすさ
オセルタミビル
(タミフル)
第一選択 ◎経口、1日2回×5日間
ザナミビル
(リレンザ)
使用可 ○吸入/咳が強いときは吸いにくい
ペラミビル
(ラピアクタ)
使用可 ○点滴/入院でよく使う
バロキサビル
(ゾフルーザ)
データ不足 △1回内服で便利だが妊婦ではエビデンス乏しい

なぜタミフルが第一選択?

🏷 3つの理由

  • 妊婦での使用実績が世界中でいちばん多い
  • 先天異常リスク上昇の報告はない
  • 経口で始めやすい(吸入より患者負担が軽い)

受診の目安

発症48時間以内の内服で効果が最大化します。発熱・関節痛・倦怠感の3点セットが揃ったら、自己判断せず早めに受診を。

ゾフルーザは1回で済むので便利ですが、妊婦さんではまだデータが少ないため、当面はタミフルが無難です。

📝 3行メモ

1妊婦のインフルは第一選択=タミフル。迷わず内服。
248時間以内の開始が効果最大。
3便利なゾフルーザは、妊婦はまだ要経過観察
第1章 風邪・インフル・発熱
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💉第1章 風邪・インフル・発熱1-4 妊婦と予防接種
第1章第2章第3章
リスク ④〝打たないで〟は大きな誤解

1-4予防接種は受けていいんですか?

りーこ
真逆の誤解!インフルエンザの不活化ワクチンは妊婦さんに強く推奨されています。しかも嬉しいおまけ付き――移行抗体で生後6ヶ月までの赤ちゃんも守れる
マミ
職場で打つ機会があったんですが、〝妊婦は打たないで〟って言われるイメージで……
りーこ
それ、真逆の誤解。不活化ワクチンは妊婦さんにむしろ推奨なの。
マミ
打っていいどころか推奨!?
りーこ
赤ちゃんは生後6ヶ月まで自分ではインフルワクチンを打てないから、ママが打つ=赤ちゃんを守る なの。これがめちゃくちゃ大事。
💡
不活化ワクチンはOK・推奨生ワクチンは妊娠前に済ませておく
第1章 風邪・インフル・発熱
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🛡1-4 ワクチンOK/NG早見表ママのためのお薬相談室

妊婦さんのワクチン可否

種類接種可否
不活化ワクチン ◎OK・むしろ推奨インフルエンザ、新型コロナ、百日咳(Tdap)
生ワクチン ×妊娠中は避ける麻疹・風疹・ムンプス(MR)、水痘、BCG
※2024年から始まったフルミスト(点鼻の生ワクチン)は妊婦禁忌です。

妊娠前に済ませておきたいこと

🏷 〝妊活開始〟のタイミングでチェック

  • 母子手帳・健康診断の記録で 麻疹・風疹の抗体 を確認
  • 抗体がなければ MRワクチンを接種(接種後は2ヶ月避妊)
  • パートナー・同居家族の抗体も合わせて確認

ママが打つと赤ちゃんも守れる

妊娠中にインフルエンザや百日咳のワクチンを打つと、胎盤を通じて抗体が赤ちゃんに移行。出生直後〜生後6ヶ月までの、赤ちゃん自身がワクチンを打てない時期を母からの抗体でカバーできます。

これは妊婦だけに与えられた〝パッシブ免疫〟という最強の育児ギフト。打たない理由はほぼありません。

📝 3行メモ

1インフル・コロナ・百日咳の不活化ワクチンはむしろ推奨
2麻疹・風疹・水痘の生ワクチンは妊娠前に済ませる。
3ママの接種=生後6ヶ月までの赤ちゃんの盾
第1章 風邪・インフル・発熱
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😷第1章 風邪・インフル・発熱1-5 症状別の選び方
第1章第2章第3章
リスク ⑤総合感冒薬より、単剤を選ぼう

1-5咳・鼻水・のどの薬は?

りーこ
市販の総合感冒薬は成分ごちゃ混ぜ(鎮痛・咳止め・抗ヒスタミンなど)。妊娠中は症状ごとに薬を分けるのが安全です。
🌡発熱・頭痛
アセトアミノフェン
🤧鼻水
第二世代抗ヒスタミン
😮‍💨
メジコン/蜂蜜
🧃のど
アズレン/トローチ
マミ
咳と鼻水がひどいんです。市販の風邪薬、飲みたい……
りーこ
〝総合〟って書いてる薬は、いらない成分まで入ってることが多いの。症状ピンポイントで選べる単剤のほうが、妊娠中は安心。
マミ
なるほど、ドラッグストアで迷ったら?
りーこ
〝妊娠◯週です〟と薬剤師に伝える。オンライン薬局でもLINEで相談OK。
💡
総合より単剤迷ったら薬剤師に〝妊娠◯週です〟と一言
第1章 風邪・インフル・発熱
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💊1-5 症状別・妊娠中OK薬ママのためのお薬相談室

症状別・OK薬リスト

症状OKな薬注意
発熱・頭痛アセトアミノフェン20週以降もOK
鼻水・くしゃみ第二世代抗ヒスタミン(アレグラ・ジルテック等)詳しくは第2章
蜂蜜・温かい飲み物/デキストロメトルファン(メジコン)市販咳止めは単剤を選ぶ
のどの痛みアズレンうがい薬、トローチ(ノンシュガー)基本OK
カルボシステイン(ムコダイン)、アセチルシステイン基本OK
鼻づまり点鼻ステロイド(ナゾネックス等)第2章参照

OTC選びのコツ

🏷 買う前のチェックリスト

  • パッケージ裏の 成分表示 を見る(複数成分なら要注意)
  • 〝妊娠中の方は相談〟の記載 → 薬剤師に一声
  • ◯◯のみ」と1成分で構成された薬を選ぶ

📝 3行メモ

1症状別に単剤で揃えるのが妊娠中の鉄則。
2咳は蜂蜜+水分から。薬はメジコンが定番。
3迷ったら薬剤師に「妊娠◯週です」と伝える。
第1章 風邪・インフル・発熱
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🏠第1章 風邪・インフル・発熱1-6 家族がインフルのとき
第1章第2章第3章
リスク ⑥家庭内感染を防ぐ3つの打ち手

1-6家族がインフルにかかった!

りーこ
予防投与できます。タミフルの予防投与は妊婦さんにも可能。保険はきかず 自費(3,000〜5,000円)、接触から 48時間以内 に開始。
マミ
旦那がインフルで、家庭内隔離できなくて。予防投与ってできますか?
りーこ
できるよ。タミフル予防投与は妊婦もOK。ただ保険はきかないの。
マミ
保険きかないんですね……
りーこ
妊婦さん+ハイリスク家族の組み合わせなら、費用対効果的に打つ価値アリと私は思う。
💊予防投与
48h以内
😷家でマスク
手洗い徹底
💧加湿
50〜60%
🚪別室で
過ごす
💡
予防投与+隔離+加湿」の3点セット妊婦の家庭内感染は〝全方位で防ぐ〟
第1章 風邪・インフル・発熱
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📋この章のまとめ第1章 風邪・インフル・発熱

🐧 りーこ先生の3行まとめ

1熱・頭痛は アセトアミノフェン(カロナール/タイレノールA)が第一選択。20週以降のロキソニンはNG
2インフルエンザにかかったら、迷わずタミフル48時間以内 の内服開始が勝負。
3インフル予防接種は 妊婦さんにこそ推奨。赤ちゃんも生後6ヶ月まで守れる。

第1章の薬剤早見カード

商品名一般名妊娠中授乳中ひとこと
カロナール/タイレノールAアセトアミノフェン全期間第一選択
ロキソニンロキソプロフェン△/×20週の壁
タミフルオセルタミビル第一選択、48h以内
リレンザザナミビル吸入
ゾフルーザバロキサビル妊婦はデータ乏しい
メジコンデキストロメトルファン咳止めの定番
ムコダインカルボシステイン痰切り
インフルワクチン不活化赤ちゃんにも移行抗体
※表の評価は本書執筆時点のガイドラインに基づきます。最新の添付文書・診療ガイドラインもあわせてご確認ください。
第1章まとめ
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